100万回の祈りをキミに
それから階段を登って一番上。
キィィと錆び付いたドアノブを回すとそこは屋上だった。
1年生は屋上に行くだけで生意気と言われるから、実はこの場所に来たのは初めて。
いつか自分が上級生になって来てみたいなぁと思っていたけど、まさか夜の屋上に来ることになるなんて思ってもみなかった。
「けっこう広いんだね!」
さっきまであんなに怖がっていたのに屋上は解放感があって、恐怖はいつの間にか消えていた。
「実は俺ここで何回か授業サボったことある」
「えー亜紀が?私も誘ってよ」
「はは、ダメ。1年生は勉強しなさい」
寒いかもしれないからと亜紀は家からブランケットを持ってきてくれていて、私たちはそれにくるまった。
肩と肩が触れて、夜の静けさと不似合いな不整脈がドクンドクンと鼓動しはじめる。
「学校の周りってビルもないし、明るい建物がないから星がキレイに見えるんだよ」
亜紀の視線と一緒に空を見上げると、普段はあまり顔を出さない星たちが今日はやけにピカピカと輝いていた。
「俺は卒業しちゃうけど波瑠は天文部と勉強頑張るんだよ」
「亜紀だって高校にいって屋上でサボったらダメだよ?」
「はは、うん。しない」
亜紀と出逢った頃はこんな風に雑談するだけで緊張して。亜紀は雲の上のような存在だったから絶対手なんて届かないと思ってた。
だけど徐々に知っていった亜紀は無邪気でちょっとイタズラ好きで。普通のみんなと変わらない中学3年生の男の子だった。