100万回の祈りをキミに



「亜紀。飲みものとお菓子持ってきたから波瑠ちゃんと食べなさい」

その時ドアの向こう側で声がして、それは亜紀のお母さんだった。


「いつもありがとうございます!」

「ふふ。いいのよ。ゆっくりしていってね」


亜紀と付き合うようになって、こうして部屋に遊びにいく回数が増えていく内に亜紀のお母さんとも顔見知りになった。

最初はやっぱりガチガチに緊張してしまったけど、亜紀のお母さんは気さくでとても優しい人で。私が遊びにくると必ずこうして何かを持ってきてくれる。


「亜紀ってお父さん似だと思ってたけど、比べると目元がお母さんにそっくりだよね!」

「え、そ、そう?」

「笑うとタレ目になる感じとか」

「それを言うなら波瑠だってお母さんにそっくりじゃん」

「どこが?」

「お喋りでドジなところ」


亜紀と付き合うことになったとうちのお母さんにも報告した。そしたら連れてきなさいって言われて、亜紀もちゃんと挨拶したいからってすぐに家に来て。

「うちの子のどこがいいの?」とか「男の子なのに肌がキレイね」とかペラペラと喋った挙げ句に「お茶出すの忘れてたからちょっと待ってね」ってやっとお母さんの話が終わって。


「なんかごめんね」と亜紀に謝ってる内にお母さんが台所から戻ってきて。

もう余計なことは喋りませんようにって思いながら麦茶をひと口飲んだらすごく苦くて。

確認するためにお母さんに飲ませたら「あ、これ麦茶じゃなくて、お母さんのダイエット茶だったわ」って言って。


もう私が恥ずかしくなって、これで亜紀に嫌われたり呆れられたらどうするのって不安だったけど、亜紀はこの一連の出来事をいまだに思い出しては爆笑する。

亜紀がいい人で本当によかったよ……。

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