100万回の祈りをキミに
「前後半10分間、赤チームはオフェンス青チームはディフェンスで練習試合なー」
ピピーとホイッスルが鳴って、ユニフォームの上に赤と青のゼッケンを付けてみんなボールを追いかけていた。
「お、亜紀!!」
ホイッスルを首からかけて指示をしていた人が亜紀に気づいた。
「あれ?今日コーチは?」
「ああ、なんかインフルエンザにかかって1週間は来れないって」
「え、マジで?」
「いい歳したおっさんがインフルエンザかかるなよって感じだよな。でもめっちゃツラそうで、そうやってからかえないほど今寝こんでる」
なんだかチームメイトと話してる亜紀はやっぱり楽しそうで、今すぐにでも練習に交ざりたそうにしていた。
「あ、波瑠。この人はすぐるさん。大学生で会うのは初めてだったよね?」
すぐるさんは黒ぶちのメガネをかけていて、亜紀より身長が高いし私から見ればすごく大人って感じの人だった。
「はじめまして。藍沢波瑠です」
「亜紀の彼女の波瑠ちゃんでしょ?知ってるよ。みんな噂してたもん。亜紀が女に夢中で練習にぜんぜん来ないって」
すると亜紀が慌てて間に入る。
「そ、それは受験とか入学準備で忙しくて……」
「あはは、冗談だよ。亜紀は本当にヘンなところ真面目だな。波瑠ちゃんもたまにこいつ融通(ゆうずう)利かないなぁとか思わない?亜紀の真面目武勇伝いっぱいあるんだよな。例えば……」
「すぐるさん!ほらホイッスル!前半終わるからホイッスル鳴らして!」
すぐるさんと亜紀のやり取りが面白くてクスクス笑っちゃう。
そのあとコートに入れてもらって、とりあえず試合が終わるのを亜紀とベンチに座って待つことにした。