100万回の祈りをキミに



「すぐるさん大学生なのに亜紀と仲良しなんだね」

年上なのに敬語じゃなかったし。
一応〝さん付け〟では呼んでたけど。


「ああ、チームメイト同士は仲間だし上下関係はなるべくナシにしようって決めてて。まぁ後輩は俺の先輩とか呼んで慕ってくるけど」

「先輩とかなんだか懐かしいなぁ。私も呼んでたもんね。亜紀先輩って」


まさか亜紀と本当に付き合えるなんて夢にも思わなかったし、出逢った頃の私が知ったらビックリして倒れちゃうかもね。

そのあと亜紀は少しだけ練習に参加してチームメイトと「夏の試合どうする?」なんて楽しそうに話してた。

そして日が沈みはじめた頃にみんな帰る準備をして、入り口の鍵を閉めたのはすぐるさんだった。


「あ、そうだ。亜紀これ」

すぐるさんが思い出したようにポケットから何かを取り出した。


「キャプテンマーク。来週から練習に来るんだろ?あいつらまとめられるのはお前しかいねーからさ」


それは春風のカラーである白と赤の模様で、オリジナルのロゴが刺繍されていた。

そういえば前に見た時、亜紀の左腕に付いてた気がする。みんなの腕には付いてないなってぼんやり思っていたけど、キャプテンマークだったんだ。


きっと忙しくなって、すぐるさんに渡したのかもしれない。

亜紀はそれを受け取ると春風の文字を優しく指でなぞっていた。

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