100万回の祈りをキミに
まずは散乱しているゴミや袋を片付けて、食器もキレイに洗った。
いつもならパパッと洗っちゃうけど今日は丁寧に。洗い物って人によって洗い方も置く順番も違うから色々と適当にできない。
亜紀のお母さんって掃除が好きそうだけど、台所もすごくピカピカにしてあるなぁ。
ケンのおやつを閉まった時にお菓子の型抜きやケーキを焼く道具があったから、この台所でお菓子も作るのかもしれない。
お菓子作りなんて無縁の環境で育ったからすごく憧れる。今度教えてほしいな……。さすがに図々しいかな。
「波瑠っていいお嫁さんになりそうだよね」
突然亜紀がそんなことを言い出すから、手に持っていたコップを落としそうになってしまった。
「なな、なに急に?」
……危ない危ない。こんなオシャレなコップ割っちゃったら弁償できないよ。
「台所に立つ波瑠を見てなんかそう思った」
「いや、私料理できないし掃除も苦手だし、なんにもできないから」
自分で言ってて虚しくなるけど。するとソファーに横になっていた亜紀がひょっこり顔を出した。
「その完璧じゃないところがいいんじゃん」
「え?」
「だって苦手なものだったら一緒にできるでしょ?それで嬉しいことも、できた喜びも半分ずつ分け合える」
その顔を見て、亜紀こそいい旦那さんになりそうだと思った。
亜紀は急かしたり追いこんだりしないから、きっと亜紀のお嫁さんになったら自分のペースで色んなことができそう。
それでもうダメだ!とかもうやりたくない!ってなっても、亜紀に褒めてほしいから頑張れる。
その笑う顔は何度だって見たくなるから。