100万回の祈りをキミに
・黒い予感
▽
窓の外は北風が吹いていて、わずかに残っていた葉っぱたちが木からさらわれていく。
「あーやべぇ。完璧風邪だわ」
隣で鼻をすすっている夏井。
いつもだったら冷めた目で見るところだけど、残念ながらその余裕はない。だって……。
「ゴホ……ゴホゴホッ……」
そう、私も風邪をひいていた。
「お前のがうつったんだよ」とティッシュで鼻をかむ夏井が睨むけどそれはこっちのセリフだ。
元はといえば先に鼻声だったのは夏井のほうだし。
予防は一応してたのに最悪だ。
「先生……風邪薬ありますか?」
2限目の授業が終わって休み時間。私は耐えられなくなって保健室に行った。
風邪なんて小学生以来ひいたことないのに、どんだけ夏井の菌は強力なんだって話。
頭がクラクラするし、とりあえず薬を飲んで次の授業ぐらいサボろうと思ったら、夏井が先に先生から薬をもらっていた。
お互いにお前のせいだと睨み合って私も薬をもらった。
「同時に風邪ひくなんて仲良しねー」と先生にからかわれたけど否定する気力もない。
私は右側のベッドに寝ることになって、これ以上うつされないように隣のカーテンをしっかり閉めた。
「あーマジで誰かさんのせいで鼻声ヤバいわー」と隣から嫌味ったらしい声がする。
だんだんイライラしてきて私は夏井に叫んだ。
「あのねー、先に風邪ひいてたのアンタのほうだから!まったくバカは風邪ひかないっていうのにさぁ」
「あー俺天才だからな」
「………」
ダメだ。夏井と話してたら悪化する。