100万回の祈りをキミに
「なんか奢ってやろうか?」
帰り道。ひとりでバス停まで歩いていると後ろから声をかけられた。その声はまだ鼻声だったけど元気は取り戻したようだ。
「肉まん?あんまん?ピザまん?」
「うるさいな。放っておいてよ」
私は夏井を睨んだ。
どうせ凪子とのやり取りを聞いていたんだろう。っていうか、あの時教室にいた人たち全員がこっちを見ていたし。
同情されても余計惨めな気分になるだけだ。
「イラついてる時はなにか食うのが1番なんだよ。お前腹減ってるからいつもピリピリしてんじゃねーの」
「なに?私を怒らせたいの?」
「いやマジだって。腹ペコの時ってなんでもイライラして見えるじゃん」
この会話がすでにイライラの原因なんだけど。
私は「はぁ……」と深いため息をついた。
凪子とはあれから顔を合わせてないし、お昼も別々に食べた。きっと私のことなんて呆れているだろう。
「友達喧嘩で落ちこむなよ。俺なんて100回以上は喧嘩してるぜ」
「アンタと一緒にしないで」
「一緒じゃん。それで仲直りすればそれでいいんだって」
友達なんて捨てるほどいる夏井にはこの深刻さは分からない。
凪子にあんなことを言った自分にビックリだけど、それ以上に凪子のほうがビックリした顔をしてた。
それが言葉となって出たということは、きっとあれは私は本心。
親友だったのに、彼氏ができておめでとうも言えないし、ファッションの相談にも乗れないし、充実した生活をおくる凪子に寄り添ってあげられない。
これが仮面を外した私の本性なんだよ。