100万回の祈りをキミに



試合は前後半20分の40分。

コートが短い分、細かい動きや左右に走る回数も多くなるから選手たちの息が次第に上がっていった。

この試合はトーナメント制で、負けたら即敗退。隣の会場でも別のチームが試合をしていて、勝てば後日またそこと試合をして、どんどん勝ち上がらなければならない。


「な、なんか接戦だね」

凪子もいつの間にか見入っていて、春風を一生懸命応援してくれていた。

ゴールが決まったと思えばまたゴールされて。選手交代が次々と行われる中、亜紀はずっとコートに立ち続けていた。


汗を流してチームメイトをフォローしたり指示を出したり。左腕に付いているキャプテンマークの責任みたいなものを感じて、さらに声を出した。


「亜紀勝てるよ!頑張れ!!」


時間は瞬く間に過ぎていって、後半のタイムが残り4分になった時には6―6の同点だった。

ボールが中央から動かなくて、みんな隙を見せたら攻められるって気迫がこっちにまで伝わってきた。


と、その時。まだ終了でもないのにホイッスルが鳴った。

ざわざわとする会場。どうやら相手チームの選手が交代する際に違反があったらしい。


そういえば亜紀が言ってた。

コート内の選手がタッチラインを越えてピッチの外に出るまでは交代した人は中に入っちゃいけないって。

もし違反した場合は間接フリーキックになるって。……ということは。


またホイッスルが鳴ってボールが春風に回った。

そしてゴール近くのサイドからボールを蹴ることになったのは亜紀。

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