100万回の祈りをキミに
間接フリーキックってたしか蹴ったあとふたり以上の選手がボールに触らないとゴールできないって言ってた。
時間は残りあと1分。
ドクンドクン……と私のほうが手に汗握っている。
亜紀の前には壁がふたり。
ボールを高めに蹴ると壁役のひとりがヘディングをしてボールの向きが変わった。
そしてまだゴールの方向を向いているボールをまた相手チームの人が頭で当てる。地に落ちたボールは春風のチームメイトの足元に転がって、すぐそばにいたすぐるさんへパス。
すぐるさんの周りに次々とディフェンスが張りついて、残りはあと18秒。すぐるさんは何故かゴールとは真逆のほうにボールを蹴った。
もうダメ……と思った瞬間。
ボールがピタリと止まった。
ゴールから直線上のど真ん中。スローモーションのように相手チームの選手たちが亜紀の元へと走るけど、もう遅い。
亜紀はそのまま思いきりボールを蹴った。
相手のゴールキーパーの人の手に当たったけど、それを弾くスピードでボールは回転する。
そして……。
ピピィィ――!!と試合終了の合図とともにボールはゴールの中に入っていた。