100万回の祈りをキミに
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その日の帰り道。私はまだ興奮していた。
「本当にすごいよ!もうダメだと思ったのにあそこでゴール決めちゃうなんてさ!」
隣には試合を終えた亜紀の姿。
あのあとコーチが会場の前で記念写真を撮ってくれて、あとで現像して私にもくれるらしい。それも今から楽しみ。
「いや、あれは俺が決めたんじゃなくて、仲間のアシストがあったからだよ」
「うん!でもなんかぞわーって鳥肌がたって、すごく感動しちゃった!」
凪子は用事があるから別々で、と先に帰ってしまったけど、きっと私たちに気を遣ってくれたんだと思う。
一緒に応援してくれたし、あとで凪子にお礼しなきゃだなぁ。イーグルのグッズにしようかな……。
「まぁ、今日は1回戦目だしまだまだこれからだけどね」
興奮する私をなだめるように亜紀が頭を撫でてくれた。
そうだよね。なんか決勝戦みたいな雰囲気だったからつい……。でもまた次の試合があるわけだし、相手チームは横断幕とか提(さ)げてたっけ。
何年も前からあるチームらしいし、優勝経験もあったみたい。だからあんなに応援してる人がいたんだなぁ。
春風も横断幕とか作ったらどうかな?
盛り上がるし、見にきてくれた人が名前を覚えてくれるかも。
「ねぇ、亜紀……」
隣を見ると亜紀がまた険しい顔をしていた。左右の目を何度も擦って手のひらを確認している。
「どうしたの?」
「なんか急に目がかすんじゃってさ……」
「目?どんな感じに?」
「うーん。なんか全体がぼやけてる」
たしか亜紀の視力は両目とも1.5あったはず。体を動かしすぎて酸欠になると目がチカチカしたりすることはあるけど、試合が終わって随分時間は経ってるし……。
「最近疲れてるんじゃない?この前は頭痛で、次は吐き気、今日は目だしさ……。一度病院に行ったほうがいいよ?」
「でも状況が長引くわけでもないし」
「ダメ!亜紀前に私が足引きずって帰った時言ったじゃん。強がってもなんの得もしない、なんでもないならそれでいいんだから、とりあえずちゃんと病院に行ってって」
「よく覚えてるね。わかった。明日行くよ」
亜紀はそう言って笑った。