100万回の祈りをキミに
クラスメイトとは程よい距離感でいられてるし、昼食を一緒に食べる友達ぐらいはできた。
それなのに夏井は私が嫌だなって思う一線を越えてこようとする。本人は無自覚なんだろうけど、ここまで迷惑そうにしてるんだからちょっとは気づいてほしい。
「そういえば藍沢って部活入ってないんだな。ほら、あの親睦会にきた子は入ってんじゃん。なんだっけ。な……な……」
「凪子」
「そうそう!凪子!」
どさくさに紛れてなに呼び捨てにしてんのって感じ。
凪子は中学と同じでバドミントン部に入った。バドミントンって一見地味なイメージだけど今は全然そんなことなくて。あの高速のスマッシュは感動するくらい。
「藍沢ってなんか足速そうだよな」
「なんで」
「なんとなく。見た目的に?」
夏井はバカなくせに少しだけ鋭い。だけど残念。私が速かったのは昔の話。今はまったく走れない。
「そういう夏井だって部活入ってないじゃん」
「あー。まぁ……他のことが忙しくて」
そして時々歯切れが悪くなる。
べつに興味ないしどうでもいいけど。そんなことよりぽつぽつと雨のようなものが頬に当たったのは気のせいだよね?
……いや、気のせいじゃない。
「雨ヤバくね?」
「べつに」
「強がるなよ。ここで本降りになったらびしょ濡れじゃ済まねーって」
「バス来るし」
「あと25分後にな」
「………」
そんな話をしてたら本当に雨が強くなってきた。ここのバス停は屋根がないし傘もないしどうしよう……。
こんなヤツなんて気にしないでいつものバスに乗ればよかった。
そしたら今頃は家に着いて、寒い思いなんてしなくて済んだのに。