100万回の祈りをキミに
病院に着くと平日なのにたくさんの人がいて、総合病院だから様々な人たちが日帰りで受診したり、薬を貰いにきたり、足にギブスをして松葉杖で歩いてる人もいた。
そんな人たちを通りすぎて、私は亜紀のいる206号室に向かった。
扉は開いたままになっていて、ふと右側の窓際を見るとそこには誰もいなかった。
しかも布団やベッドはキレイに畳まれていて、亜紀の痕跡はなにひとつ残っていない。
……あれ、もしかして退院した?
いや、それだったら連絡が来るはず。
「あ、あの……」
ちょうどその時、私の後ろを看護師が通って呼び止めた。
「昨日運ばれてあそこに入院してた人は……」
「ああ。塚本亜紀さんですね。彼なら別の棟に移動になりましたよ。お見舞いの方ですか?」
……別の棟に移動?
なんでそんなことするの?まさか入院が長引くとか……?
「は、はい。それで亜紀は今どこに……?」
「彼の病室は506号室ですよ。場所は……」と看護師さんが丁寧に病院の案内図を取り出して説明してくれた。
「ここからだと東側の階には行けないので一回下に降りて、そこからエレベーターで……」と看護師が話す声が次第に遠退いていく。
だって指をさしてる別棟と言われる場所の名前が見えてしまったから。
それは〝脳神経外科〟