100万回の祈りをキミに
たしかに最近は亜紀の話というより、私が一方的に亜紀の魅力について語ってしまった部分がある。
そこは反省というか、これからは気をつけようと思うけど。だからってそんな真面目な顔して『やめない?』なんて言わなくてもいいじゃん。
「ちょっとのろけすぎた?ごめんって。これからは夏井の話も聞くからさー」
「じゃなくて」
夏井は言葉を探すように難しい顔をしたあと、ポリポリと頭を掻いた。
「俺は先輩の話が嫌だとか先輩の話をしすぎとか、そういうのを言ってるんじゃなくてさ」
「………」
「だって藍沢、先輩の話するとき現在進行形で話してんの自分で気づいてる?」
窓は閉まっているのにどこからかすきま風が入ってきて、カーテンがわずかに揺れた。
そういえば登校する時は向かい風だったっけ。帰りは追い風がいいなぁ……なんて、頭では違うことを考えていた。
「そんなの別にいいでしょ。それより早くそれやらないと先生に怒られるよ」
「よくねーよ。だって先輩は……」
「あーはいはい。この話は終わり!私は日誌書き終わったから帰るよ。あとは頑張って」
「おい、藍沢……!」
掴まれそうになった手をすり抜けて、私は夏井から離れた。
聞きたくないことは耳を塞いで、見たくないものは目を閉じる。
そうすれば簡単に自分の世界は作れる。