100万回の祈りをキミに
なにも考えず歩いていたら河川敷のほうまで来てしまって、私は土手沿いの一本道にいた。川の近くでは寒いのに小学生の子たちが大声でボール遊びをしている。
……子どもは元気だなぁ。
私も小学生の時は寒いのに日が暮れるまで外で遊んだりしてたっけ。
数年前までは私もランドセルを背負っていたはずなのに、あの無邪気さはもう残ってないな。
そんな子どもたちを横目で見ながら、カイロで再び両手を温めた。――その時、ボールがポーンッと私の元に飛んできて、ピタリと足元で止まった。
「すいませーん!ボール取ってくださーい!」
下を見ると先ほどの小学生が私に手を振っている。
たしかにこの丘を登るより投げてもらったほうが早いけど、なんで私の足元で止まっちゃうのかな……。
人気のキャラクターがデザインされたボールを手に持つとそれはけっこう固くて。気づかなかったけどこれサッカーボールじゃん……。
「お願いしまーす!」と子どもたちの声が響く中、横からなんの気配もなくそのボールを奪われた。
そして軽く蹴ったボールはまるで魔法のように、男の子の手の中に着地して「川に落とすなよー!」とその子たちに向かって叫んでいた。
「俺って天才じゃね?今のコントロール見た?」
自分で自画自賛しちゃうところがコイツの悪い癖だと思う。このひと言さえなければ私も普通にすごいって思えるのに。
「こんな所でなにしてんの?」
私は呆れた顔で夏井を見た。