100万回の祈りをキミに
せっかく夏井に対しての苦手意識もなくなって、たくさん話すようになってたのに〝あれ以来〟私はまた接し方が以前のように戻っていた。
夏井とは亜紀のことを聞いたり話したりできるって思ってたのに、『やめない?』なんて言うからまた心を閉ざしてしまった。
「いや、散歩してたんだけどいなくなっちゃって」
「………なにが?」
「ああ、犬が。あいつ隙を見つけるとすぐ脱走すんの」
夏井の態度はもちろん変わらない。
「一緒に探して」なんて言われたら面倒だと思って、私はすぐに立ち去ろうとした。
もう少し河川敷を歩くつもりだったけど、夏井に会ってしまったから変更だ。
……家に帰って途中だったドラマでも見よう。
「俺があんなこと言ったから怒ってんだろ?」
夏井に背を向けて歩き出そうとした時、そんな言葉が飛んできた。それでも返事をせずに歩き進めていると、追い討ちをかけるようにまた声が。
「現在進行形だって言ったこと。俺間違ったこと言ったつもりないし、怒らせたかったわけでもねーよ。ただ俺は……」
キリキリと何かが込み上げてきて、私はくるりと振り向いた。
「つまり夏井はいつまでも亜紀の話はするなって言いたいんでしょ?」
「するなとかじゃなくて藍沢の気持ちの話をしてて」
「は?私の気持ちなんてアンタに関係ないじゃん」