100万回の祈りをキミに
夏井の言いたいことは分かってる。
亜紀がいなくなって1か月、2か月、3か月はみんな話を聞いてくれたし亜紀の名前を出しても困った顔はしなかった。
だけど慰めの言葉が同情に変わって。次は同情から励ましの言葉になって。
まだ若いから大丈夫とか、まだ出逢いがあるからとか、亜紀の分まで生きてあげることが幸せとか。
みんな前向きなことを言って、亜紀を忘れさせる準備をさせたがるけど、私は亜紀を忘れることなんてできない。
きっといまだにそう思ってることは、私以外の人から見れば呆れられてしまうことなのかもしれない。
いつまで言ってんだよって。
いつまでも言ってんじゃねーよって。
だから私は笑顔の仮面を付けた。
心配させたくないから、もう平気だよって。
亜紀の話も未練たらしくしないし、ちゃんと前に進んでるから大丈夫だよって笑ってた。
本当は笑えてなんかないのに。
私はぜんぜん平気じゃないし、ぜんぜん大丈夫じゃないのに。
亜紀がいなくなったことを信じたくないって気持ちは持っていたらダメなことなの?
べつに誰にも迷惑かけてない。私の気持ちは私だけのものだ。
「俺、藍沢を見てるとたまに空っぽに見える時があるんだよ。今のお前はどこにいるんだろうって。ずっと過去の記憶だけじゃ生きられない」