100万回の祈りをキミに



亜紀の脳にできた腫瘍は悪性で、周囲の正常な脳組織に浸潤性(しんじゅんせい)に発育するため、手術で摘出することは困難なこと。

もし正常な脳組織まで取ってしまうと術後に麻痺や言語障害が残ること。

亜紀の場合、他の臓器から転移したわけではなく、脳自体から発生した腫瘍だということ。

治療法は放射線治療ではなく化学療法を行って、薬で腫瘍を小さくさせていくこと。


亜紀のお母さんが説明してくれたことは難しい言葉や聞き慣れない単語ばかりで……。

どこまで理解できたかと聞かれたら、私は半分も理解できていなかったと思う。

唯一わかったことと言えば、これから亜紀は病気と戦っていかなければいけないことと。あとひとつ。

これは亜紀の命に関わる病気だということ。


――コンコン。

私は部屋をノックして扉を開けた。


「波瑠!今日は少し遅かったね。外寒かったでしょ?早くこっちにおいで」

いつもと変わらない亜紀が私を手招きする。


これは現実だけど現実じゃない。こんなに亜紀は元気なのに命に関わるなんて、そんなことあるはずがない。

私は必死で自分に言い聞かせていた。

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