100万回の祈りをキミに
そういえばこの保健室って亜紀と出逢った場所だっけ。
亜紀のボールが頭に当たって、それからお姫様だっこで運んでくれて。お互いの名前にビックリして、それから親しくなって。
懐かしいなぁ……もう1年以上も前のことなんだね。
亜紀と一緒にいるようになって、時間が過ぎるのが本当に早くて。きっと楽しくて幸せだからあっという間に10年や20年過ぎちゃって。
気づけばずっと一緒にいるよねって、言える未来を簡単に想像できた。
〝冬は越せない〟
そんなのおかしい。
だって今10月だよ?それじゃ亜紀は2か月後にはいないかもしれないってこと?
絶対ありえない。ありえるはずがない。
だけどもし、本当だったら?
亜紀の病気を受け入れずに嘘だ嘘だと繰り返して、もしも亜紀が本当に死んじゃったら?
「……っ」
考えただけで過呼吸のようにうまく息が吸えなくて、たまらずにベッドから起き上がった。
ねぇ、嘘だよね?
これは現実の出来事じゃないんでしょ?
「波瑠~。大丈夫?次の授業出られそう?」
いつの間にか50分が過ぎていて、体育を終えた凪子が迎えにきてくれた。
私の姿を見るなり凪子は慌てて駆け寄ってきた。
「波瑠どうしたの?気持ちわるいの?」
口元を押さえながら私は浅い呼吸を繰り返してる。
亜紀は今頃なにをしてるだろう?
薬の投薬が今日からはじまるって言ってたから心配だな。早く会いたいな……なんて、頭の片隅で思いながら、凪子の手を掴んだ。
「……凪子……亜紀死んじゃったらどうしよう」
ベッドが涙の雫で濡れていく。
こんな恐怖感今まで感じたことはない。私の震える体を凪子はそっと抱きしめてくれた。