100万回の祈りをキミに
学校が終わってすぐ私は病院へと向かった。
冬が越せないというのなら冬なんて来なければいいのに、すれ違う人たちの格好はコートにダウンジャケット。私の吐く息は白く空へとのぼっていった。
亜紀の病室の前に立って一旦心を落ち着かせた。凪子にすべてを話して泣きじゃくったせいか、まだ鼻の奥がツーンとしている。
……よし。
「亜紀~」と元気よく扉を開けるとそこには誰もいない。
テレビは付けっぱなしで、布団も脱け殻のように形が残っている。まるでそれはパッと消えてしまったかのように。
私は急に不安になって、亜紀を探しにいこうと方向転換するとドンッと壁のようなものにぶつかった。
「わぁ、波瑠。ビックリした!」
後ろにいたのは紛れもなく亜紀で、手にはマグカップを持っていた。
「急騰室に行ってたんだよ。今日は冷えるし、なんかお茶が飲みたくなっちゃって」
亜紀の声、亜紀の匂い。
私は安心してそのままぎゅーっと亜紀に抱きついた。
「波瑠?どうしたの?」
「べつになんでもないし」
「はは、なにそれ。すごく嬉しいんだけど、とりあえず中に入らない?ここ普通に人が通るし」
ここが扉の境目だってこと忘れてた。
私はそのままズルズルと後ろに下がって、亜紀もくっついたまま前に進む。それがなんだか可笑しくて自然と私は笑えていた。