100万回の祈りをキミに



「今日の体調はどうだった?」

部屋に入って亜紀はベッドに、私は丸椅子へと座った。そして私は取り付けられている加湿器のスイッチを入れた。

亜紀が風邪ひいたら大変だし、私も絶対持ち込まないようにしないと……。


「今日は1日眠かったよ。食後に今まで飲んだことない量の薬を飲まなきゃいけないし、腕からも薬を投与されて。たぶん副作用だけどずっとウトウトしてた」

「頭痛と吐き気はどう……?」

「薬のおかげなのかそれは大丈夫だった」


もちろん亜紀は自分の病気のことをまだ知らない。

だから亜紀には体全体に良くないウイルスが入って、それを取り除く為に治療していくと嘘の説明をしたらしい。

以前から悩まされていた頭痛や吐き気、視力低下は脳腫瘍によるもの。今日は大丈夫でも腫瘍が小さくならなければ、その症状も悪化して亜紀は余計に苦しむことになる。


「もし私といる時に気持ち悪くなったら遠慮しないで吐いてね」

「うん、ありがとう」

亜紀の枕元には青い洗面器。

これから沢山の治療をする亜紀に私はなにができるだろう。わからない、わからないけど。


「亜紀。私なんでもするから!亜紀が良くなるためだったらなんでもするからね!!」

亜紀の体の中は私には見えない。

だからこそ気持ちで負けちゃダメだと思った。



ねぇ、亜紀。


神様は乗り越えられない試練は与えないっていうけど、それは嘘だよ。

きっとそれは乗り越えられた人が作った言葉で。

頑張って頑張って頑張り抜いたけどダメだった人はなにも語ることができないの。

そんな理不尽で悲しい世界に、今も私は生きてるよ。

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