100万回の祈りをキミに
ど、どうしよう……。
あのまま立ち去れる雰囲気でもなかったし、なんで運わるく大型トラックが来ちゃうのかな。
「あの私……」
「ああいうのってまじビビるよね!免許取りたての頃なんて何回トラックに煽られたことか」
「……はぁ」
ため息まじりの返事を返しながら、私は降りるタイミングを見計らっていた。
ここは大通りだし交通量も多いから、もう少し走って細い道に出たら言おう。
「俺の運転大丈夫?たまに言われるんだ。酔うって」
「え?ああ、大丈夫です。私乗り物酔いとかしないタイプなんで……」
「なら良かった」
すぐるさんはシルバーの車に乗っていて、車内はとてもいい香りがした。
そういえばお父さん以外で男の人の車に乗ったのって初めてかも。すぐるさん本当に大人のひとになっちゃったな。
「波瑠ちゃんすごい大人びててビックリした。声をかけて違ったらどうしようってすげー実はドキドキしてたんだ」
そんな私の心を読むみたいにすぐるさんが同じことを言った。
すぐるさんとは2年近く会ってなかったから、お互いに変わってる所はいくつもあると思う。
「すぐるさんこそ車に乗ってて誰かと思いました」
「ああ、俺も今じゃ社会人だからね。もう毎日毎日休みなく働いてるよ」
すぐに亜紀の話になると思ったのに、すぐるさんは楽しい雑談ばかりしてきて、降りますなんて言えなくなっていた。