100万回の祈りをキミに
いつの間にか夏井は試合に参加していて、その声がこっちにまで聞こえてくる。
夏井がプレーしてる姿なんて初めて見たけど、普段のおちゃらけた夏井じゃなくて、すぐるさんが言うように真面目で。
悔しいけど、すごい良い顔をしていた。
「波瑠ちゃんさ、健人のウインドブレーカー見たことある?」
すぐるさんはきっとこの話題を私にするかどうか、すごく迷ったんだと思う。なんとなくだけど、その横顔を見て感じた。
「亜紀の……ですよね?」
名前を口にすると、すぐるさんは少し安心したように「うん。亜紀の」と繰り返した。
「あのウインドブレーカーどんな意味だか知ってる?」
「……わかりません」
それは少し間を開けて。
すぐるさんは息を吐くように言った。
「亜紀と一緒に戦ってるって意味を込めて着てるんだって」
私はグッとココアを強く握りしめた。
夏井は嘘つきだ。
私の心ばかり探ってきたくせに、本当の素顔を見せなかったのはどっちなの?
「……夏井と亜紀ってどんな関係だったんですか?」
「どんな関係だったかぁ……。難しいけど健人は亜紀を目標に追いかけてて、亜紀は健人に憧れてたって感じかな」
「亜紀が憧れてた?」
「うん。健人と話してると元気になるって。慕っていたのは健人じゃなくて亜紀だったんじゃないかな。アイツにだけはなんでも話せるって言ってたよ」
なにがただの先輩後輩の関係だよ。
夏井は本当におお嘘つきだ。