100万回の祈りをキミに



気づけば練習試合は終わっていて、コートの入り口から続々と人が出てきた。


「すぐるさん、すいません。私のせいで時間を台無しにさせちゃって……」

「ん?別にいいよ。行くって言ってたわけじゃないし、ただどんな練習してるかなーって見たかっただけだから」


すぐるさんって本当にいい人だなぁ。

これからも春風に関わっていてほしい、なんて私が言うのはヘンだけどそう思った。


チームメイトたちがコートを離れていくのを確認して、立ち上がろうとした時。

「おーい!健人!」と何故かすぐるさんが夏井に手を振った。

え、え……?


「すす、すぐるさん……なんで夏井を呼ぶんですか?」

「しー」

それはつまり隠れていろってこと?

私は再び腰を低くして自販機の後ろに身を潜めた。

夏井が近づいてくる足音が聞こえる。私は見つからないように小さく体を丸くした。


「すぐるさん来てたんですか?」

「おう。今来たとこ。ちょっと遅かったみたいだけどな」

「仕事忙しいんですか?」

「まーな。お前も社会人になれば分かるよ」


……夏井の口調が学校と違う。

上下関係とか一番気にしなさそうなヤツなのに。なんだか今までの夏井のイメージが崩れていく。

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