100万回の祈りをキミに
私が自販機の裏に隠れてるなんて夢にも思わないだろうな。
すぐるさんはなんで夏井を呼んだんだろう。真面目な部分を私に見せたかったとか?
「なんか随分丸くなったな、健人。お前すぐ飲み物ぐらい奢ってくださいよーとかねだるじゃん」
「じゃ、奢ってください」
「残念。小銭ねーわ」
「札でいいじゃないっすか」
あはは、と笑い声が響く中、私はずっと息を小さくして見つからないようにしていた。
「なんかあった?」
「え?」
「そんな顔してるぞ」
ガコンッという自販機からなにかが落ちてくる音がしたから、すぐるさんは夏井に飲み物を買ってあげたのかもしれない。
カンとプルタブを開ける音がして、少し沈黙になったあと、夏井は話はじめた。
「なんか迷ってるんですよね。本当のことを言おうかどうしようか」
「当ててやろうか?波瑠ちゃんのことだろ?」
ドキッ!と心臓の音が聞こえるぐらい動揺した。
「お前が誠凌に行ったのって波瑠ちゃんがいるからだろ?あの冬からずっと気にしてたじゃん」
……え?
道路を走る車の音にかき消されないように必死で声を拾った。
「まぁ、それだけじゃないっすけど。誠凌は家から近いし、学校帰りにここにも通いやすいし。でも塚本先輩から彼女が2年後に同じ高校にくる予定だって聞いてたし、丁度いいかなって」
「丁度いいって?」
「俺先輩から頼まれごとしてるんで」
……亜紀からの頼まれごと……?