100万回の祈りをキミに
みんなと行きたくないとか男子を応援したくないとか、そんなんじゃなくて。
ただサッカーをしてる人を見るとまた胸が詰まるから避けたいだけ。こうして彼がいた学校に入学したくせに、本当は思い出の場所とか一緒に行った店とかはあれから一度も行けていない。
強く深く胸に残ってる場所はまだ苦しくて仕方がない。
当時となにひとつ変わらない場所なのに、もう彼はいないんだとか、もう二度と一緒に来ないんだとか。
そういう現実を私は見たくないんだ。
――その時、ステージ下に座っていた私の頬に冷たいなにかが当たった。
「……ひゃっ!」
自分の意志とは関係なく〝らしくない〟声が出てしまった。
「はは、なにその可愛い声」
そこにいたのは夏井だった。
手に持っていたのは清涼飲料水のペットボトル。
男子はたしか一回戦は突破したって聞いたけど、なんで体育館にいるんだろう。いや、そもそも私もう関わらないでって言わなかったっけ?
「これ飲み物」
「……いらない」
「いらないじゃなくて。担任からの参加賞だってよ」
参加賞?結局飲み物は優勝してもしなくても用意してたってことか。