100万回の祈りをキミに
「今日の話を聞かせて」
私が来ると亜紀は決まってそう言う。
病院は暇で検査しかすることがないから、私が学校でなにをしたとかなにを話したとか、亜紀に報告すると嬉しそうに聞いてくれる。
「今日は家庭科の授業で調理実習をしてクッキーを作ったんだけど……」
「え?クッキー?食べたい!」
「いや、私もそのつもりで作ったんだけどね……」
家でお菓子作りなんてしないし、調理実習なら材料や道具はもう揃ってあるから美味しいクッキーを作って亜紀に持っていこうと張りきったんだけど……。
「失敗というか焦げちゃってさ。あ、でも捨てるのもったいないから全部食べたよ?」
さすがに亜紀にアレはあげられない。
彼氏がいる子はみんな上手に作ってて、可愛いラッピングをしてプレゼントしたりして。なんで私はこんなに不器用なのかな……。
「焦げてたのに食べたの?」
「うん。すごーく苦かった。ペペッってなったけど、ゴミ箱に入れるのもなんか虚しくてさ」
「ぷ、はは。波瑠は波瑠だなぁ」
それは亜紀の口癖だ。
今度は失敗しないように作って亜紀に食べてもらいたいな。病院のご飯は味が薄いらしいし、調理師がカロリー計算してるからあんまり持ち込みはできないけど。
「亜紀は今日どんな感じ……」
話を振ろうとした時、さっきまで笑顔だった亜紀の顔色がどんどん悪くなっていた。
気分が悪いのか口元を押さえて我慢してるように見える。