100万回の祈りをキミに
足の痺れがあるみたいだから車椅子使う?って聞いたけど、亜紀は自分で歩くって。
私は亜紀を支えながらエントランスホールに降りて外に出た。
中庭にはたくさんの患者さんがいて本を読んだり、芝生に寝転んでる人もいる。
「11月だなんて思えないね」
「なんか外出るの久々だから肺が痛い」
「ええ?だ、大丈夫?」
「平気平気」
こうして亜紀と並んで歩くのも久しぶりかもしれない。
小さなことでいちいち感動して、それは亜紀も同じみたい。私たちは日当たりのいいベンチに腰かけた。
どこからか野良猫が迷いこんだのか芝生の上でゴロゴロとしていて、それを亜紀と笑って見てた。
「亜紀、これからいっぱい楽しいことしようね」
「んー?急にどうしたの?」
亜紀は私の肩に寄りかかっていて、サラサラとした髪の毛が顔に当たってくすぐったい。
「私が走れなくなって苦しんでた時、波瑠がまた楽しいと思えることに出逢えるように願ってるって言ったの覚えてる?」
「うーん。言ったっけ?」
「言ったの。私それすごく心に響いて。そういうこと言える人って素敵だなって。だから私も亜紀がまたたくさん楽しいことできるように願うって決めてるんだ」
すると亜紀は私の手を握った。
「俺はいつでも波瑠の笑顔が見たいから、楽しいことに出逢えますようにって思ってるよ」
「あ、やっぱり亜紀覚えてるじゃん」
「いま思い出したんだよ」
私たちの頭上には桜の木。
寒い冬を越えて、春になったら、満開の桜が咲く。
そのキレイな景色を亜紀と絶対見たい。
それはこの病院じゃなく、外の世界で。