100万回の祈りをキミに
渋々それを受け取ると、夏井は少し距離を開けてステージに寄りかかった。
バレーの応援をしにきたってわけじゃなさそうだし、私に飲み物を届けにきただけならグラウンドに戻ればいいのに。
なんて、凪子の応援そっちのけで気になってる私は負けだと思う。
「〝はる〟ってさ、いい名前だよな」
ひとり言なのかなんなのか。その夏井が呟いた言葉はばっちり私に届いていた。
「突然なに?」
今さら褒められても夏井に対しての苦手意識は変わらない。むしろひとり言なら聞こえないように言ってほしい。
「いや、急にそう思っただけ」
本当になんなの。
そんな物思いにふけるタイプでもないのにぼーっとしちゃって。
「用がないならグラウンドに行けば。まだ試合あるんでしょ?」
「次の試合勝たないと俺の出番ねーし」
「でもここじゃなくたって……」
「いいじゃん。俺がいたいんだし」
ああ、また同じことを言う。
そうだ。たしかあれも球技大会の日だった。