100万回の祈りをキミに
「あ、あれは……お前が彼氏はいたことないって、先輩の存在をなかったことにしたのがムカついたんだよ」
すごく引っ掛かる言い方。
「なかったことになんてしてない。ただいたって言ったら色々聞かれると思って……」
「普通に別れたって言えばいいじゃん」
「別れてないし」
「でも付き合ってもない、だろ?」
「さっきからなんなの?なにが言いたいの?」
やっぱり夏井とはこうなる。
夏井はバカだけど鋭くて、隙間を見つけるとどんどん無理やりこじ開けてくるようなヤツで。
あとからあんなこと言わなければよかったとか、あんなに熱くならなくてもよかったとか、反省したりするけど。本人を目の前にすると私の喜怒哀楽の〝怒〟の部分が強く出てしまう。
「お前がこんな風になるから、先輩は別れようかって言ったんじゃねーの?」
その瞬間、ピタリと風が止んだ。
脳裏によみがえる亜紀との日々。
「な、なんでアンタがそれを……」
「知ってるよ。先輩言ってたし。波瑠はきっと俺を想って前に進めないと思う。いっそのことすげー嫌な男を演じて嫌いになってくれたほうが波瑠のためだって」
もしかして亜紀には今の私の姿が想像できていたのかもしれない。
亜紀を想って、想い続けて、現実という扉を閉ざしてしまった今の私が。