100万回の祈りをキミに
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その日の夜、私は亜紀と撮った写真を眺めていた。
ぬくもりなんてないのに、何度亜紀の写真に触れて確かめたかわからない。
――『自分だけが先輩を想って、自分だけがツラい思いをしたなんて思ってんじゃねーよ』
夏井の言葉がぐるぐると耳の奥で繰り返されている。
私は亜紀を想い続けていないとダメだった。キミがいなくなったことから目を背けていなければダメだった。
だけどそれが〝正しい〟ことじゃないと分かってる。
変わらなければいけない。
受け入れなきゃいけない。
でも、どうやって?
――と、その時。スマホがクッションの上で鳴った。
『もしもし』
電話に出ると、向こう側で小さな声が聞こえてきた。
『波瑠……』
それは凪子からの電話だった。
あれから凪子からメールや電話は何回かあったけど、私の気持ちが不安定で凪子と向き合う勇気がでなかった。
『波瑠、ごめんね。私……』
私はいつも自分のことばかりで。メールの返事が返ってこなかったり、電話に出なかったり、私が凪子から逃げてる間の凪子の気持ちなんて考えてなかった。
友達として親友として、本当に最低だと思う。
『凪子。私ね……』と心の奥の扉を開けようとした時、電話のスピーカーから車道を走る車の音や風の音が聞こえてきた。
時間はもう22時を過ぎていて、明日の朝は霜が降りるほど冷えこむと言っていた。
『な、凪子、今どこにいるの?』
『神社にいる』
神社って凪子がいつも願掛けしにいくあの神社?
なんでこんな時間に……。
色々と考える暇もなく、私は気づくとマフラーとコートを着て出掛ける準備をしていた。
『ちょっとそこで待ってて!』
戸惑う凪子を残して、私は電話を切った。