100万回の祈りをキミに
外に出ると顔が強張るほど寒くて、私は凪子の元まで走った。
凪子がよく行く神社は踏切の向こう側。凪子の家からは少し離れていて、地元の人しか行かない小さな神社だ。
神社に着くと周りの木々が怖いほどに揺れていて、明かりもぽつぽつと外灯があるだけ。
短い階段をのぼって境内(けいだい)に行くと、凪子の姿が見えた。
想いとは裏腹に走るスピードが気持ちに追いつかなくて、運動不足だなぁ、なんて思いながら、私は凪子に近づいた。
まだ息が整わない中、強い風が私の背中を押した。
「凪子、ごめん」
深く頭を下げた。
「私、凪子にたくさん言ってないことがある。親友で大好きなのに凪子に彼氏ができて、毎日楽しそうにしてる姿を見て、たまらなく不安になった」
自分だけが変わってないって。
みんなどんどん先に進んでしまうって。
「ごめん凪子。本当にごめん……」
すると、凪子が私の手を握った。
その手は冷たくて、いつからこんな寒空の下にいたんだろう。
「私ね、ここに来るといつも波瑠のことをお願いするの。言い出したら止まらなくて、あれもこれもって」
「………」
「願掛けなんて気休めだって分かってる。亜紀先輩の時もね、毎日お守りが増えていって何回も波瑠に渡そうと思った。だけどできなかった」
凪子の涙がまるで海のように溜まっていく。
私の気持ちなんて、誰にも分からないって思ってた。
だけど本当はみんな同じなんだ。
見守る側も見守られる側も、誰かを想って、誰かのために祈るのは同じなんだ。