100万回の祈りをキミに
次の日。私は学校終わりに一旦家に帰って、私服に着替えた。お母さんには凪子の家に泊まると嘘を付いたから、帰りが遅くなっても大丈夫。
防寒対策でカイロを大量にカバンに入れて、亜紀がいる病院へと行った。
「あ、波瑠。ちょっと待ってね」
亜紀はちょうど部屋で夕食を食べていた。病院の夕食は早くてぜんぜんお腹に入らないと亜紀はいつも言ってるけど。
今日の献立はサバの味噌煮とワカメご飯で、急いで食べようとする亜紀を見ていたら無意識にお腹が鳴ってしまった。
「ふ、あはは」
「わ、笑わないでよ……!」
私だってお腹を鳴らすつもりはなかった。できれば聞かれたくなかったけど、この狭い病室じゃ防ぎようがない……。
恥ずかしがっている私を見て亜紀が手招きをする。
「残り、食べていいよ」
「いやいやいや、亜紀のご飯なんだから亜紀が食べなきゃダメだよ!それに私だってテーブルに置いてあったパンつまみ食いしてきたし、ぜんぜんお腹なんて……」
グー……と、タイミング悪くまた音が鳴る。
もう、私の意志とは無関係に鳴らないでよ……!
「ぷ、ははは。本当に食べて。毎日ムリして完食してるぐらいだから手伝ってくれると助かる」
「……じゃ、食べる……」
「うん」
またお腹が鳴ったら嫌だから、私は亜紀の残したご飯を食べた。