100万回の祈りをキミに


望遠鏡の先はあの日と同じで夜空に向いていて、少しひんやりするけど亜紀と肩を寄せあってるから不思議と寒さは感じなかった。


「また私から覗いていい?」

「どうぞ」

一度体験してるのにレンズを覗く時は緊張して、この向こうになにが見えるんだろうって胸が高鳴る。

ゆっくりと目を近づけると、そこにはダイヤモンドのようにキラキラと輝く星たち。

真冬の星はとくにキレイに見えるっていうけど、キレイなんて言葉よりももっと上。ずっとずっと永遠に見ていられるぐらい美しくて、神秘的な世界。


……やっぱり天文部にある望遠鏡とは違うなぁ。

宇宙に行って直接見てみたいなんて、単純な考えかもしれないけど、行けるならいつか行ってみたい。


「波瑠」

「んー?」

「波瑠はこれからたくさん色々なものを見て、キレイだと思うものにたくさん触れてね」

その言葉に私はそっとレンズから顔を離した。


キレイなものなら亜紀と見たい。

その景色をふたりで分かち合って、笑いたい。

そんな簡単なことさえ、病気は奪っていく。


こんなことを言っても仕方がない。こんなことを言ってもなにも変わらないことは分かってる。

だけど今だけは言わせて。


神様、なんで亜紀だったの?

なんで亜紀を病気にしたの?

亜紀はなにも悪いことをしない。とても優しくて、みんなに必要とされてて、汚れのないキレイな心を持った人だよ。


なのに、なんで亜紀なの?

なんで亜紀の命を奪うの?

なんで、なんで……。


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