100万回の祈りをキミに
「……亜紀。私亜紀とずっと一緒にいたい」
なにも知らなかった私に楽しさや喜びをくれて、恋を教えてくれた。
亜紀が私の世界に色をつけてくれたんだ。
亜紀がいない世界なんて、ねずみ色の空と同じ。
濁っていて不透明で、そこに太陽なんてない。
「波瑠、俺も。俺も波瑠と一緒にいたい」
同じ気持ちなのに叶わない。
亜紀は私を包むように抱きしめて、ぎゅっと力をこめる。
「ごめん。病気になって。いっぱい悲しい思いさせてごめん」
耳もとで聞こえるその声に私は全力で首を振った。
亜紀はなにも悪くない。
亜紀が悪いなんてことは、なにひとつない。
すると、亜紀はなにかを決意したように私の体を静かに離した。
「俺ね、ずっと時間を巻き戻せたらいいのにって思ってた。俺はどうしたって波瑠を好きになってしまうけど、波瑠は俺を好きになっちゃダメだって、教えてあげられたらいいのにって」
「そんなこと……」
「こんな時、俺のことなんて忘れて幸せになれとか、他にいい人見つけなよとか、そんなこと笑って言えたらカッコつくのにな」
亜紀が目に涙をたくさん溜めて、その大好きな瞳に私が映る。
「ごめん波瑠。突き放したり、嫌われたりしたほうがラクなのに、波瑠を手放せなくて」
「………」
「今の俺には幸せになってとか前向きなことを言って波瑠を置いていく準備はできない。できないけどさ、波瑠……」
亜紀が私の手を握って、それは痛いぐらい。
「俺を忘れられなくても、生きて」
ドクン……と心臓が1回鼓動する。
「苦しくても泣きたくなっても、それでも強く生きて。それが俺のたったひとつの願い」
このまま亜紀を連れ去って、どこか遠くいきたい。
不便でなにもなくて、だれもいない場所でも、亜紀がさえいればいい。
亜紀がいれば、私はなにもいらないのに。