100万回の祈りをキミに
「凪子と仲直りできてよかったじゃん」
バスを待つ間、夏井はいつものように大あくびをして。屋上での出来事がなかったかのように接してくる。
夏井がどんな人なのか。ムカつくことも多いけど、なんとなく分かりはじめていた。
夏井は白い息を吐いて「22日だな……」とひとり言のように呟いた。耳がいい私はちゃんと聞こえてしまったけど。
バスが来るまであと5分。
かじかんだ手を同じタイミングで温めた瞬間、夏井が私のほうを見た。
「藍沢。最後にひとつだけ教えてやる」
この上から目線の言い方にはもう慣れてしまった。
「お前と塚本先輩が出逢った日って覚えてる?」
忘れるはずがない。
あの保健室からすべてがはじまった。
「あのボールが頭に当たった日も夜にフットサルのナイターが会って話したんだ。ずっとお前のこと心配してた。あんなにミスする先輩は見たことねーってぐらい、練習してても藍沢のことばっかり」
「………」
「だからいつもみたいにサッカーボールが当たったぐらいじゃ平気だって。俺なんて野球ボールが当たったことあるけど、タンコブだけだったって言ったら、気にしてるのはそれだけじゃないって」
「………」
「保健室まで運んで目覚めるの待ってたら、すごい幸せそうな顔してアイスクリームって寝言言ってたって。しかも1、2回じゃなくて何回も言うから可愛くてって」