100万回の祈りをキミに
亜紀の世界は亜紀だけのもので。
だからなにを想って、なにを感じていたのか、全部を知るのはムリだと思う。
だけどこうして今亜紀を強く感じることができる。
「声も名前もどんな瞳をしてるか分からないのに、気になって気になって好きになってたって。先輩は藍沢と出逢った時から好きだったんだよ」
私も。
私も出逢った時から亜紀が好きだった。
「俺はお前の知らない先輩を知ってる。藍沢が聞きたかったこと、聞けなかったことも俺が知ってる範囲で良ければ教えるよ。いくらだって」
向こう側からバスが見えてきた。それはゆっくりと近づいて、もうすぐ停車する。
「だけど、先輩の気持ちなら藍沢が一番よく知ってるんじゃねーの?一番近くにいて一番大切にされてたのはお前だろ。……ちゃんと会ってこい」
「………」
「先輩に会って自分の気持ち伝えてこいよ」
夏井が私の頭を2回撫でた。
少し乱暴で、だけど痛くない。
夏井は名前のとおり暑苦しくて、私と亜紀の間に入りこんできて。でも亜紀が太陽みたいでポカポカする人って言っていた意味がわかる。
もう心に迷いはない。
私がグッと前を見て、キミに会いに行く決意をした。