100万回の祈りをキミに



あれから先輩は私のことを「波瑠」と呼んでくれている。嬉しいけど呼ばれるたびにドキドキして、声が裏返りそうになってしまう。


「ちょ、波瑠。なに今の」

凪子が飲み物を買って戻ってきた。


「んーなにって?」

「頭ポンポンだよ!亜紀先輩とどういう関係?」

「ど、どういう関係もなにもボールが頭に当たって保健室まで運んでもらった関係?って前に説明したじゃん」

「それは知ってるけどなんか随分親しくなってない?」


あのボールが当たった時、私をお姫様だっこして運んでくれたと人づてに聞いた。意識はなかったし、重かっただろうなって今さら思うけど。


「亜紀先輩って学校で一番モテるのになんで彼女いないんだろう」

凪子は隣で体育座りをして、飲み物をひと口飲んだ。


たしかに他のモテる人たちはそれなりに遊んでそうなのに本当に先輩は部活一筋って感じで特定の人はいないらしい。

いつも女子から言い寄られてるけど、傷つけないように笑顔で上手に交わしてる。


「波瑠が先輩の彼女になっちゃえば?」

「え、はい?」

「先輩が女子と親しくするの珍しいし、チャンスだよ」


チャンスってなにがチャンスなんだか。

そう思うこと自体おこがましいと思うほど亜紀先輩は高嶺の花だよ。顔も小さいし肌もキレイだし、隣に並んで歩ける人なんて限られてる。

それに先輩はボールを当てたっていう責任がまだあるから、私に優しくしてくれるんだと思うし。


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