100万回の祈りをキミに
学校の前には【誠凌高等学校 第48回体育祭】と書かれた看板が立て掛けられてあった。
48回の歴史の中で彼も経験したこの体育祭。
高校生になると家族や身内が応援にくることはないし、私も見たことはないけど、隠れてでもいいから彼が参加した体育祭を見に行きたかったなぁと今さら後悔してる。
あの頃はこの高校に入学できるなんて夢物語だったし、今でも時々信じられない時があるぐらい。
「椅子の並びは横に8脚ずつの4列だからな!名前の順で座って荷物は足元に置くこと。昼まで教室に鍵かけるから忘れものはないようにしろよー」
きっと各教室で先生が同じ説明をしている。それが言い終わるとギィィーと椅子を引く音が校内に響いた。
私もカバンを肩にかけて椅子を持ち上げた時、「あ」と先生が思い出したように叫ぶ。
「そういえば今朝登校中に安藤が貧血起こして。暫く保健室で休んでから参加するから、だれか安藤の椅子と荷物も運んでやってくれ」
……安藤さんが貧血?大丈夫かな……。
「あ、俺運ぶよ!安藤の椅子と荷物どこ?」
そう言って真っ先に手を挙げたのは夏井だった。