100万回の祈りをキミに
「藍沢波瑠」
「はい」
高校生活初日のホームルーム。座席は名前の順で座らされ、藍沢(あいざわ)の私は廊下側の一番前の席。
担任の早坂(はやさか)先生の点呼も早々に終わって、私は最後の人の名前が呼び終わるのを待っていた。
――『ねぇ、席ってどこ?』
『なんでそんなこと聞くの?』
『んー。だって私いつも名前の順で前にされるから。た行だから真ん中ら辺でしょ?』
『はは、あたり。窓際から3列目の後ろから2番目の席』
『えーいいなぁ。授業中寝ててもバレなそう!』
『波瑠じゃないんだから俺は寝ないよ』
ふっと、2年前に交わした言葉を思い出した。
笑うと垂れ下がる目と私の頭を優しく撫でてくれたあの大きな手が大好きだった。
ぎゅっと胸が痛くなる中、いるはずもないのに私の視線は彼がいたあの席へ。
「夏井健人」
窓際から3列目の後ろから2番目の席。
もちろんその席には別の人が座っていて、先生に名前を呼ばれていた。