100万回の祈りをキミに



「体育祭、楽しかったな」

夏井は上を見上げながら言った。

いつの間にか外は暗くなっていて空には無数の星。そのキラキラと輝くものを見てまた胸がぎゅっとして、私は自分の足元を見つめた。


星空なんてキライ。

願いごとのひとつも叶えてくれないくせに雨の日や雲が多い日。月が明るい日や空気が澄んでない日には顔を出さないワガママな星なんて大キライ。


「藍沢、今日頑張ってたよな」

「………」

「玉入れ」


だから嫌味にしか聞こえないんだけど。

頑張るもなにも参加した競技が綱引きと玉入れしかなかったし、綱引きが一瞬で負けてみんな悔しがってて。

次の玉入れこそ!と燃えてたから、サボれなかっただけで別に頑張ったわけじゃない。


「なんか藍沢が玉拾って何回もカゴに投げてんの見てちょっと感動した」

「……なにそれ。私のことなんだと思ってんの?」

そう言うと夏井はまた笑った。


午後に行われた教員競争もクラス対抗リレーも見応えはあったし、退屈はしなかった。

だけど夏井が言うように〝楽しかった〟って感情とはまた違う。体育祭の最中に亜紀がいればなぁと何回も思ったし、いないと分かっていても3年生の中にその姿を探してしまったから。


きっと私の心はここにあるように見えて、亜紀と過ごしたあの日々に置いてきてしまったんだと思う。

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