100万回の祈りをキミに
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体育祭という大きなイベントが終わり、期末テストが始まる頃にはセミの鳴く季節になっていた。
気温は日に日に上がり、バス停を降りて坂道を上らなきゃいけないあの時間が毎日地獄。
「こらー!夏井!また園芸部のホース盗んだだろ!」
「盗んでねーよ。借りただけっすよ!」
夏井と先生の追いかけっこは今に始まったことじゃない。7月になって此処のところ毎日夏井は友達と水をかけて遊んでいる。
たまに女子生徒にかかって「あ……」ってなってるけど、夏井に本気で怒る人はいない。
みんな「またバカなことして」って許す。
夏井はおちゃらけたムードメーカーを越えて、学校の人気者になりつつあった。いつも大勢の友達といて、上級生からもなんだか可愛がられている。
「おー藍沢おはよう!お前も交ざる?」
「………」
交ざるわけないでしょ、と冷たい目線だけ送って無言で通りすぎた。
最近気になるのは時々夏井に〝お前〟と呼ばれること。
その境目がいつだったか覚えてないけど、夏井は誰とでも仲良しだから私に対してもその感覚なのかもしれない。