100万回の祈りをキミに
入学式は9時に始まって、お昼には初日の学校が終わった。
あのあと軽い自己紹介をやったけどみんなひと言ふた言だったし、名前も全然わからない。
……友達作りってどうやってやるんだっけ。
でも私には凪子がいるし、あんまり深い友達はいらないかも。話せないこと、話したくないことが沢山あるから。
だけど親友の凪子でさえも、私の一番奥の部分だけは知らない。深海のように深くて息もできないようなこの部分だけは、きっと私にしかわからない。
「なぁ、親睦会やるんだけど行かない?」
帰りの準備をして6組に行こうとした時、突然だれかに声をかけられた。
それは〝あの席〟に座っていた人だった。たしか名前は夏……夏……。
「あ、俺夏井健斗(なついけんと)。健人でもいいし夏井でもいいしなんだっていいんだけど。親睦会くる?」
そうだ。夏井だ。
自己紹介の時に一際テンション高くて、聞いてもないのに「好きな女のタイプは」とか言い出して。みんな笑ってたけど私は普通に引いてた。
クラスにひとりはこういうムードメーカーみたいな人っているけど、バカ騒ぎするの苦手だし、きっと関わることはないだろうなぁ。
「ねぇ聞いてる?親睦会だよ。親・睦・会!」
……そんなに強調しなくても。
「あ、私は……」
「えー3組親睦会なんてあるの?いいなぁ」
そこへ現れたのは凪子だった。私が来ないから迎えにきてくれたんだろう……って、そうじゃなくて。
「来たい?いいよ。交流を深める会だし他クラスの子もオッケー」
「本当?」
「ちょっと凪子!」
「いいじゃん。高校生活はこれからなんだし楽しもうぜってことで藍沢も参加なー」
「ま、待って……」
私が断る前に夏井はクラスメイトが集まる輪の中に行ってしまった。
「もう、凪子」
「ご、ごめん。つい……」
ぜんぜん乗り気じゃなかったのに、私は結局行くことになってしまった。