100万回の祈りをキミに



それから私は先輩と連絡先を交換した。お父さんを除いて電話帳に異性の名前を登録したのは初めてだった。


「波瑠、よかったね」

その日の帰り道、凪子は何故かずっとニヤニヤしている。

今日のバドミントン部は休みで久しぶりに一緒に帰れるからニヤニヤしてるのかなって思ったけど、絶対に違う。

自分の手柄のように鼻高々にしてる凪子を横目で見た。


「……遊びにいく約束は前にしてたの。今回のはその穴埋めみたいな感じで先輩はOKくれたんだよ」

「それでもいいじゃん!初デートには変わりはないんだし」


まだ日にちや時間を決めたわけじゃなく口約束のままだけど、プラネタリウムのチケットの期限が今週までだから行くなら週末になる……と思う。


そもそも男子とふたりきりで出掛けたことないし、話のネタがあるわけじゃないし。

沈黙になったらどうすればいいの?お昼ご飯とか一緒に食べるの?洋服は私服だよね?なにを着てくの?可愛い服とか持ってないよ?

いや、その前に相手が亜紀先輩だよ。

私が並んで歩ける存在じゃないよ。私なんかが隣にいたら笑われる……。


「……波……瑠、波瑠!」


色々と考えてる中、凪子の呼び掛けにハッと我に返った。


「そんなにぼーっとしてたら車に轢かれちゃうよ」

「ごめんごめん」

だって昼休みの時は嬉しいの気持ちが強くてワクワクしてたけど、冷静になった今は緊張のほうが勝つ。

まだ具体的になにも決まってないのに、今からこんな緊張してたら当日倒れちゃうんじゃないかな……。


「凪子は先輩とよく普通に話せるよね。私なんていつもモゴモゴしちゃってさ」

凪子と話してるみたいに話せたらいいのに。


「だってそれは波瑠が意識してるからでしょ?」

「え?」


「波瑠は亜紀先輩が好きなんだよ」

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