100万回の祈りをキミに
そうだよね。
初恋相手と両想いになれるだけでスゴいのに、その人と結婚までして子供も授かなんて、イーグルのライブを最前列で見るより低い確率だと思う。
亜紀先輩は春になれば卒業して高校生になるし、私もお母さんと同じでそれっきりの関係になるんだろうな。
それで先輩は可愛い彼女を作って私の存在なんて『そんな子もいたな』ぐらいの感覚になって、いずれ忘れられてしまうと思う。
「はぁ……」とベッドに横になった瞬間、どこかでスマホが鳴っていた。ブーブーとバイブ音が聞こえるけど場所が分からない。
……あれ、机の上じゃないし、クッションの裏側でもないし、ポケットにも入ってない。
音を辿るとカバンの中から聞こえて、そういえば入れっぱなしだったかも。
スマホをやっと見つけると、ちょうどバイブ音が切れてしまった。その画面を見て私の思考は一瞬止まる。
――着信【塚本亜紀】
震えるほど動揺した。
え……ま、待って。今の先輩からの電話だったの?
出れなかったし、電話なんてかかってくると思ってないから心の準備ができてない。
こういうのってかけ直したほうがいいの?いや、かけ直すなんてムリ……!
そんな葛藤を数分繰り返していると、またスマホが鳴った。
……先輩からだ。
私はゴクリと唾を飲みこんで電話に出た。