100万回の祈りをキミに
ドーム型の会場はすでに薄暗くて、席も円を描くような配置になっていた。全体が見渡せる真ん中の席がちょうど空いていて、そこに座ることにした。
「これ席倒れるんだね」
先輩がレバーを下げるといい感じに背もたれがフラットになった。
「え、レバーどこですか?」
「ここ」
「あれ、ちょっと固い……」
「やってあげるよ。ほら」
「うわっ……!」
私が体重をかけすぎていたせいで背もたれは勢いよく倒れて、恥ずかしいぐらい直立になってしまった。
それを見た先輩は謝ると思いきや、突然吹き出した。
「ぷっ、あははは」
大声で笑う先輩なんて初めて見た。
「ご、ごめん。ぷっあはは。なんかツボに入っちゃった」
「……笑ってないで助けてください。起き上がれないです」
「うん。本当にごめん。はは」
先輩の手を借りてようやく私は元の位置に戻れた。
私は顔から火がでるぐらい恥ずかしいのに、先輩はまだ笑っている。情けない姿を見られて少しだけムスッとしていると先輩が慌ててフォローした。
「違う違う。バカにしてるとかじゃなくて可愛くて笑ったんだよ」
可愛くて……?どこが?
「だって波瑠が子どもみたいにバンッて足が浮いてそのまま倒れちゃって。それがすごい可愛かったの」
「……そんなの可愛くないです」
「うん。そのムッとした顔も俺的にはツボ」
「そもそも先輩が勢いよくレバーを下げるから……」
「だからごめんって」
そのハプニングのおかげで私の緊張は一気になくなった。お互いに気を遣い合ってたけど、なんだかちょっと距離が縮まった気がする。