100万回の祈りをキミに
「……先輩も星が好きなんですか?」
凪子には詳しくないって言ってたけど、普通の人よりは知っていそうに見える。
「実は俺の父親が自然科学天文台で働いててさ。詳しくないけど小さい頃はよく出入りしてた」
「天文台ってあの丘の上にある立派な建物のところですよね?」
たしかあそこってたまに一般解放してるけど普段はしてなくて、働いてる人しか中に入れないって聞いたことがある。
まさかあそこで先輩のお父さんが働いていたなんて……。
「今度見に行く?中にでかい望遠鏡があって覗くと本当に星が間近で見れるよ」
「え、でも一般解放は……」
「うーん。なんとかなるよ」
もしかして私がプラネタリウム見て興奮しちゃったから、また気遣ってくれたのかな……。
そんなことを思っていると突然先輩が歩く足を止めた。
「あ、言っておくけどデートしようって言った約束と今回のプラネタリウムは別だからね。今度はちゃんと俺が決めて誘うから」
ニコリと笑う先輩を直視できない。
先輩とまた次があるんだって思えたら、空を飛べそうなほど舞い上がりそうになってしまった。
もし時間が戻せるのなら、私はもう一度この日に戻りたい。
ふたりの始まりを予感させてくれたこの日に戻って、また亜紀と楽しかった時間を一緒に過ごしたい。
そしたら星がキライになることもないのに。
亜紀が教えてくれた星を見上げられないなんて、悲しいことは起きないのに。
ねぇ、亜紀。
今の私は亜紀にはどう見えてる?
弱虫で情けなくて幻滅してる?
なんでもいいから声を聞かせてよ。
お願いだから、なにか聞かせて。