100万回の祈りをキミに
亜紀との写真を見ると胸が痛いし苦しいけど、
コルクボードから外す時のほうがもっとツラかった。
だってそれを見るたびに悲しい顔をしたのは私じゃなくて、私の家族や凪子だから。
立ち止まったまま過去のものにできずに、泣いてばかりの私を見て悲しむ人がいる。
周りがどんどん日常へと戻っていって、亜紀がいない毎日が普通になって、ずっと悲しみに浸っていられないと知った。
だから私は前に進んでるふりだけしてる。
本当の気持ちは胸に隠したまま。
「あら、凪ちゃん帰ったの?」
「うん。さっき」
お母さんが買い物にいっている間に凪子は家に帰った。課題を一緒にやる約束もしたし、また近い内に来る予定だけど。
「そうだ。お盆におばあちゃんの家に泊まりがけで行くんだけど波瑠はどうする?」
お盆という言葉に動揺しつつ、平常心を保った。
「課題多いし私はパスかな。みんなによろしく言っておいてよ」
「そう。波瑠は今年……亜紀くんのところに行くの?」
――ドクンドクン。
嫌な鼓動。
今後ろ向きで良かった。きっと私すごい動揺が顔に出てる。
「去年はその……あの状態だったし行けなかったでしょ?」
亜紀がいなくなって8か月後の中学3年生の夏。
セミの声が聞こえないほど私は無気力で、ただ頭の中では亜紀と約束した誠凌高校にだけは行かないとって思ってたことだけは覚えてる。
それから凪子の力も借りて受験して受かって。
お母さんの目から見たら今の私は十分立ち直っているように見えるのだろう。あの頃の私を知っているから余計に。
それはきっとお墓に行って花を供えられちゃうぐらい。
私は元気ですって笑顔で言えちゃうぐらいに見える?
「行けたら行ってくるよ」
そう笑顔で返した自分が怖くなった。