100万回の祈りをキミに



「おい。暇じゃねーとか言ってたくせに」

夏井が文句を言いながら近づいてきた。

安藤さんに否はないけど、私の他に声をかけてたなら教えてほしかった。しかも夏井が来るなら絶対に断ったのに。


「まぁいいや。じゃ花火行こうぜ!」

「花火!?」


ただお土産を受け取りにきただけなのに、徒歩の人と自転車の人とそれぞれが動きはじめていて場所を移動しようとしている。


「このまま帰るのもったいないし、せっかく集まったんだから花火でもやろうって話になったんだよ」

「私はいい。帰るから」

「は?暇だから来たんだろ?行くぞ」


すごく嫌な展開になってしまった。

向こうでは安藤さんや女子たちが「早く~」と手招きをしてるし、本当に困る……。

結局私は断りきれなかった。


みんなで移動したのは近くの河川敷。

花火といってもコンビニで売ってる手持ち花火で男子が適当に買ってきた。


待ちきれない人たちが次々と火をつけはじめて、私にもピンク色の花火が回ってきた。

あちらこちらで色のついた煙が上がって、火薬の匂いが風に乗って鼻まで届いてくる。


みんなのはしゃぐ声を聞きながら、私の花火に火をつけたのは夏井だった。

チリチリと小さい炎が育って、次第に音を鳴らしてピンクの花火が噴射した。


「もっと楽しそうにしろよ」

夏井に嫌味を言われたけど、機嫌がいいのかその顔は笑顔だった。

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