100万回の祈りをキミに
それから色々な人が話しかけてくれて、みんな気さくでいい人そう。
「藍沢さんって今彼氏いる?」
絶対くると思っていた話題。
女子にとって恋愛の話は挨拶のようなものだから。
「……えっと」
こんな時に凪子は近くにいないし。だから親睦会なんて乗り気じゃなかったんだよ。
交流を深めるための会なんて、色々と質問されるに決まってるし笑って誤魔化すのにも限界がある。
「藍沢さんモテそうだしいるよね」
「ねぇ、なんの話?恋愛の話なら俺らも混ぜて~」
「ちょっと。男子はダメ!今は女子だけのヒミツの話してるんだから」
いつの間にか私以外のクラスメイトはだいぶ打ち解けていて、男子たちも傍に寄ってきた。
「俺彼女募集中なんだけど、藍沢彼氏いるの?いないなら俺とか……」
「ご、ごめん。今は勉強に集中したいっていうか……」
勉強なんて古典的な嘘しか思い付かなかった。
「そっか。今まで彼氏はいたことあるの?」
頭の中で駆けめぐる数えきれないほどの日々。
パノラマのように映像を思い出して、私は必死に平然を装った。
「彼氏はいたことないよ」
自分でもビックリするぐらい笑顔でそう言ってた。
「嘘!意外~」なんて盛り上がっても、私は笑顔。まるで顔にお面でも付けているような感覚だった。
べつに大丈夫。
こんな風にしていれば本当の私なんて誰も見えないし、気づかない。
あれからこうして色々なことを乗り越えてきた。この胸が詰まる感じも今に始まったことじゃない。