100万回の祈りをキミに



夏井のどこがいいの?なんてもちろん聞けなかった。

『優しいところもあって良いヤツだよね』って前に言ってたけど、私にはその魅力がわからない。


「波瑠、戸締まりしっかりね!なにかあったらちゃんと連絡するのよ」

8月の中旬。今日お母さんとお父さんはおばあちゃんの家に泊まり掛けでいく。


「はいはい。お父さん車で待ってるんだから早く行きなよ」

「あ!そうそう!これ山口のキヨさんに届けてくれない?」

「えー」

「昨日行こうとしたんだけど色々と準備してたら忘れちゃって。じゃ、よろしくね~」


パタンと閉じるドア。

全然よろしくじゃないよ。お母さんが〝これ〟と指さしたのは玄関にある大きなスイカだった。


山口のキヨさんとは81歳のおばあちゃんで、ここから10分くらいのところに住んでいる。

お母さんは昔介護施設で働いていて、キヨさんの旦那さんがそこに入院していて知り合いになったらしい。


結局キヨさんの旦那さんは5年前に亡くなったけど、その関係は今も続いていて私も何回か会ったことがある。

足を悪くしてなかなか外に出られないみたいだけど、毎年お歳暮やお中元を送ってくれるし、私も元気かどうか気になるから言われたとおりスイカを届けることにした。

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